2023年7月17日
上野の東京都美術館で、マティスの回顧展が開催されていたので見に行ってきた。
アンリ・マティス(1869~1954)の初期から晩年に至る約150点。
ポンピドゥー・センターの豊かなコレクションを味わえる。
世界最大規模のマティス・コレクションを所蔵するパリのポンピドゥー・センターの
全面的な協力を得て開催する本展は、日本では約20年ぶりの
大規模な回顧展。絵画に加えて、彫刻、素描、版画、切り紙絵、
晩年の最大の傑作と言われる南仏ヴァンスのロザリオ礼拝堂に
関する資料まで、各時代の代表的な作品によって多角的にその仕事を
紹介しながら、豊かな光と色に満ちた巨匠の造形的な冒険を辿る。
「第4章 人物と室内」〜「第6章 ニースからヴァンスへ」のみ写真撮影が可能であった。
第一次大戦後に南仏のニースに移住していた時期の作品群で
構成される第4章「人物画と室内画 1918-1929」である。
木炭やグラファイトで描かれたモノクロームの作品群や、伝統的な要素の
強い展示作品からは、基礎や初心に立ち返ろうとする姿勢も見られる。
自画像 | 自画像 |
「私の線画は、私の感動の最も純粋な翻訳である」という言葉を
残している通り、“線”がマティス作品の根幹の一部を担っている。
ニースの室内シェスタ |
1920年代にニースへ居を構えたマティスは、それまでより小さなカンヴァスを
用いて、小ぶりな肖像や室内情景、また風景画などを次々と制作した。
赤いキュロットのオダリスク |
重要なモチーフとなったのが、イスラムのスルタンに仕える女性「オダリスク」である。
『赤いキュロットのオダリスク』は、お気に入りのフランス人モデルをイスラムの
女性に扮装させ、アトリエを劇場のように飾り付けて描いた一枚である。
石膏のある静物 | 緑色の食器棚と静物 |
20歳を過ぎてから画家の道を志したマティスは、純粋な色彩
による絵画様式であるフォーヴィスム(野獣派)を生み出すと、
84歳にて世を去るまで鮮やかな色彩と光を探し求めた。
夢 |
『夢』はアシスタントからモデルとして、1954年より画家の死までマティスの傍にいた
リディア・デレクトルスカヤを描いた作品のひとつ。安息する彼女の上半身が
画面全体に配置され、造形的だけでなく心理的な充足が示されている。
ギュスターヴ・モローに師事したのち、伝統的な絵画から脱するべく
模索を続け、純粋な色彩による絵画様式であるフォーヴィスム(野獣派)を
生み出し、モダンアートの誕生に決定的な役割を果たした。
絵画に加えて、彫刻、ドローイング、版画、切り紙絵、晩年の最大の
傑作であり、マティス自身がその生涯の創作の集大成とみなした
南仏ヴァンスのロザリオ礼拝堂に関する資料まで、各時代の代表的な
作品によって多角的にその仕事を紹介しながら、豊かな
光と色に満ちた巨匠の造形的な冒険をたどるものである。
座るバラ色の裸婦 |
幾何学的な表面を特徴とする《座るバラ色の裸婦》は、少なくとも13の段階を
経て幾度となく修正と再構成を講じたのちに完成に至っており、強い
探究心と粘い強さを持つマティスの人間性をも感じられる作品と言える。
鏡の前の青いドレス |
若い女性と白い毛皮の外套 | 立っているヌード |
「若い女性と白い毛皮の外套」は、1944年に描かれた。
白い毛皮に横たわる女性と背景の赤い壁が華やかに
調和していて、戦争の足音とは無縁のエレガンスを感じる。
赤の大きな室内 | マグノリアのある静物 |
「赤の大きな室内」は、90度に隣り合う2つの壁に掛けられたカラーと白黒の絵、
アラベスク細工の円卓と矩形の円卓、そして床に敷かれた2枚の動物の皮など、
2つで1組を成すように事物が配されている。筆描きによる壁の白黒デッサンが、
あたかも窓のように空間を切り取るのも見どころである。
黄色と青の室内 |
『黄色と青の室内』は「ヴァンス室内画」シリーズの第1作。
単純化された背景に、陶製のつぼや果物、また小型円卓に
載せた花束といった、マティス絵画ではお馴染みの事物が描かれている。
「芸術・文学雑誌ヴェルヴ」表紙デザイン |
「芸術・文学雑誌ヴェルヴ」表紙デザイン |
、撮り下ろし4K映像の『アンリ・マティス ヴァンス・ロザリオ礼拝堂』も最後に見た。