西洋美術館 

2016年5月

五月のゴールデンウィークに2日間に渡って、2回上野に行き、美術展を見た。
一度目は平成館で、黒田清輝展である。2度目は西洋美術館でカラヴァッジョ展である。

   
国立博物館平成館  黒田清輝展 

黒田清輝展は、「湖畔」で広く知られ、日本美術の近代化のために力を尽くした黒田清輝(1866-1924)
の生誕150年を記念した大回顧展。この展覧会は師コランやミレーなど、黒田がフランスで出会い導かれた
作品をあわせて展示しながら、留学時代の「読書」「婦人像(厨房)」や帰国後の「舞妓」「智・感・情」などの
代表作によって、黒田清輝の画業全体を振り返ろうとするもの。

   
西洋美術館  カラバッジョ展 

国立博物館平成館と西洋美術館では、同じ上野駅なので、
一日で見ればよかったのだが、じっくり見て回ると結構疲れるので、
違う日に、再度出直して、見に行った。カラヴァッジョ展も見ごたえがあった。
ちょうど西洋美術館の建物が世界遺産への登録の動きがあって、それも話題をよぶ。
そのためなのか、休日でカラヴァッジョ展の魅力なのか、人はたくさん入っていた。

   
カレーの市民(ロダン)  上野駅

カラヴァッジョは美術史に残る天才の一人で、バロック美術を代表する画家。西洋絵画に革新をもたらした巨匠にして、
その生涯は血と犯罪に彩られている。謎に包まれた画家である。60点ほどとされる全作品のうち11点を集めた
展覧会である。一番の話題作は世界初公開となった「法悦のマグダラのマリア」。死んだときに手荷物の中にあった
3点の絵画のうちの1点とされる。死後400年以上所在がわからず、2014年に個人コレクターのもとで発見された。
同じ構図の模作が多数制作されたが、カラヴァッジョ研究の権威が本作を真筆と認めた。
新約聖書に登場する聖女を題材にした作品で、闇を背景に白い肌と衣装が際立つ。わずかに開いた口や目、
組んだ指や顔の細やかな陰影。マグダラのマリアが悔悛(かいしゅん)し、神への祈りに恍惚(こうこつ)となった
表情をとらえ、深い精神性をたたえた名作だ。けんかがもとで殺人を犯してローマから逃亡中、近郊の町で
身を隠していた。1606年の夏に制作された。新約聖書の一場面を描いた「エマオの晩餐(ばんさん)」もそうだが、
殺人後の作品は、それ以前に比べ、熱狂が秘められすごみが増した感がある。カラヴァッジョの作品は、
光と闇の明暗の対比や暗い背景から人物が劇的に浮かび上がる描写が特徴的だ。
常設展も入って、見て回った。

西洋美術館の前庭には、ロダンの彫刻がいくつか飾られていた。上野駅前も人がたくさん行き来していた。

   
西洋博物館を世界遺産へのポスターのついたバス  西洋美術館 世界遺産へ 

ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界文化遺産に、東京・上野の国立西洋美術館本館など、
「近代建築の父」といわれるフランスの建築家ル・コルビュジエ(1887〜1965)の世界各国にある
建築作品が登録される見通しとなった。事前審査する諮問機関が「登録」を勧告したためで、
7月10日からトルコで開かれる世界遺産委員会で最終的に決まるが、登録はほぼ確実とみられる。
(5月18日付朝日新聞)